紅型作家

亀谷明日香

紅型雑貨 虹亀商店の店主であり、虹亀商店の紅型をデザインから製作まで全て手掛けている。

1977年
8月15日生まれ
1996年
自由の森学園卒業
1997年
沖縄へ移住
2001年
沖縄県立芸術大学 デザイン工芸学科 紅型専攻卒業
2008年
紅型雑貨 虹亀商店、沖縄県島尻郡八重瀬町にオープン
2011年
紅型雑貨 虹亀商店、沖縄県南城市知念に移転

沖縄が好き、という想い

北海道生まれ、東京育ち。
とても便利で緑の多い素敵な街、武蔵野市吉祥寺で子供時代を過ごし、自由の森学園という楽しい高校に通いました。
高校1年生のときに友人と2人旅で訪れた沖縄に夢中になり、
中でも、沖縄の青い海、亜熱帯の風、溢れる自然と人々の優しさに出会ったことは、私の宝物になりました。
それからは、沖縄で過ごすためにバイトを頑張り、1日でも長く滞在するため安宿に泊まったり、キャンプをしながら、沖縄を何度も旅する日々。
高校を卒業したら沖縄に移住することを私はこの時に決めました。
小さい頃から好きだった「絵を描くこと」「ものをつくること」を活かせる道を模索し、沖縄県立芸術大学デザイン工芸学科へ入学、そこで出会ったのが、沖縄の伝統工芸「紅型」です。

15世紀に沖縄で生まれた染色「紅型」は、ひとつの作品が生まれるまでに、型紙を彫り、糊を置き、一色一色染めていく、といった、様々な工程があります。そのどれもがとても難しく、そして面白い。
紅型のカラフルな色彩がどれも天然の顔料だということにも心が躍りました。
そして私は、自分が描きたい世界を紅型で表現したいと夢を描くようになりました。
大学在学中は、自分で作った小さな作品を路上で販売したり、国際通りのお土産屋さんに置いてもらったりすることが楽しく、
卒業制作ではそんな作品を並べられる移動式の紅型染め屋台を制作しました。
そして、卒業して7年目となる2008年に、工房が併設された小さなお店「紅型雑貨 虹亀商店」を沖縄県島尻郡八重瀬町にオープンしました。
このとき、私の代表作品でもある「琉球あんどん」も誕生しました。

19歳で沖縄に来た、経験の浅い、沖縄の人でもない私が「紅型をやっています。」と言っていいのかと、紅型の奥深さを知れば知るほど、好きになればなるほど、私の内に不安が生まれ、打ちのめされそうになることもありましたが
そんなとき、沖縄の方がお店にいらして「紅型染めはあまりに身近にありすぎて今までその魅力に気がつかなかったけど、
あなたの作品を見て、紅型ってとても美しいものなんだと思った。」と言ってくださったときのこと、そのときの報われたような嬉しい気持ちは忘れることができません。

美しい青い海が広がる南城市に移転した「紅型雑貨 虹亀商店」は、今年で14年目を迎えます。
今では私にとって紅型は、沖縄での暮らしそのものであり、生活の中にいつもあるものです。
工房の中をハイハイしていた4人の子供たちはすっかり大きくなり、一番上の長女は私の制作を手伝ってくれるようにもなっています。
県外から来た私が紅型をやっていいんだろうかという思いは、沖縄で暮らし、経験を重ね、多くの皆さんに支えられて年月を重ねていけたことで、少しずつ自信へと繋がっていきました。

沖縄が好き、という想いは今も色褪せることなく、増幅するばかりです。
こんなにもワクワクする日々に出会わせてくれた沖縄に、紅型に感謝をこめて、今ここにいる私だからこそ描ける世界、それを描き、これからも伝えていきたい。
私の学びはまだまだ始まったばかり。知りたいことや作りたいものは次から次へと出てきます。
これからも続いていく私の物語の中で、皆さんにお会いできることを心から楽しみにしています。

2021年2月吉日
亀谷 明日香